院長のつぶやき

院長の日頃感じている疑問や気になった出来事などを紹介します
現在の日本の少子化対策では、少子化は防げません。 05/06/05
子供が増えている国の“少子化対策”をそのまま、真似しましょう!!はじめに「フランスでは、子供を5人生むと、それだけで食べていけると言われている。妊娠時から分娩まで無料で、赤ちゃんを産むと人数に応じた育児手当が支給され税金が優遇される。産んだあとも、役所の職員が定期的に子供をきちんと育てているか監視に(!!)来る。幼稚園から大学までほとんどお金がかからない。その他日本では考えられない支援が多く、外国人居住者にも適用される。」これは、今年4月、久しぶりに会った在仏40年になる友人(日本人)からの話である。フランスも少子化が進み、1994年には合計特殊出生率が1.65まで落ち込んだが、国&企業が一体となったフランスの少子化対策が(日本にも出来そうだが、なぜか出来ない!!??)奏功し、2003年には合計特殊出生率1.91を記録した。

日本でも,1,973年(S.48年)の2.14をピークに、1,989年(H.元年)に1.57になった(1.57ショックとして記憶にあたらしい)。その後2回にわたる大きな対策(いわゆるエンゼルプランと新エンゼルプラン)にもかかわらず、2,003年には1.29まで落ちんだ。

他の先進国でも、ほとんどの国で少子化が進んでいる。

日本も含め諸外国の少子化の主たるものは、ほとんどが「経済的負担」に起因している。

日本の少子化対策は育児環境の改善に重点を置いており、「経済的負担」軽減なくしては、改善しないであろう。

先進国で出生率の上昇に転じたフランスとスウェーデンの対策を、要旨のみ紹介したい。

フランスの少子化対策

フランスは、1930年台から家族給付制度を導入し、多種多様な家族支援を実施し、先進国間で高い出生率を維持している国である。政府には、家族関係省庁代表部が設置され、年間2千億フランにのぼる家族給付制度をはじめとする子育て運営を司る政府機関である。

フランス政府は、出生率の増加は家族給付制度の充実と育児環境(特に託児所、保育所の整備)等、家族政策を充実させたことが最大の要因であるとしている。日本で少子化対策が奏功しない最大の原因は、家族給付制度等の現金~現物支給の少なさである。

フランスにおいても女性は、仕事か子育てかでの悩みは日本同様で、両立に関しての種々の制度的支援があるが厳しい状況にあり、女性から男性に対する育児支援の要求が高まっていることは日本と同様である。(「要求」と言うことでは同様であるが、男性の育児参加に対する男性自身の意識や企業の育児支援制度は日本と比較できないくらい進んでいる。)1930年代に出生率が低下し、現在日本で騒がれている人口低下問題が生じるわけだが、フランスでは65歳以上の人口(高齢化)は15%台で、200年かかって達成した数値であり、日本が短時間で達成(!!)した事実とは比較にならないほど緩慢なものであった。このため少子化が人口問題の中心と考えられ、対応策は少子化にほとんどが向けられ、老人対策が軽んじられた経緯がある。日本とはまったく逆で、少子化対策に関する日仏間の温度差は実に興味深い。出生率低迷に対し、古くから家族単位の福祉の増進を図り、出生率の上昇を目指す多彩な家族政策が採られてきた。1.939年の家族法典制定はその基礎をなすもので、家族~子供を守る制度は日本と比較にならない先進性がある。

フランスの家族政策について述べてみたい。これら多岐にわたる諸手当は、出産奨励と安心して子育ての出来る社会の構築を目的としているのである。

*   フランスの家族政策について(主たる部分のみ、他は省略)。

(1)家族生活の援助活動(主として経済的に恵まれない人たちに対する援助)

(2) 家族給付制度による多様な現金~現物給付活動(後述)

(3) 家族計画に対する援助活動(省略)

“家族給付制度の現状と特徴”

*   給付総額:約3兆円(!!)(AD.2,000年前後)

*   ほとんどのフランス国民をカバー(国民皆家族給付、居住外国人も対象)

*   受給者:子供の養育者、受益者:子供
(16歳未満、実際は20歳までが対象となる施策が多い。)

*   無職でも可(職業従事者のみ対象の時期あり)

*   家族給付の種類(10種あり:
(1)一般的扶養給付:4種 (2)出生関連給付:3種 (3)特定目的給付:3種)

Cf.一般的扶養給付 :1&2の手当が家族給付総額の53%を占める。

1:家族手当:第2子以降義務教育終了(16歳)まで支給 第2子:682フラン/つき第3子:1556フラン/月

2:家族補足手当:3歳以上3人以上居るとき、所得制限あり。

(補)高所得家庭でも4人の子に約¥46,000、シングルマザー自身:子が成長するまで受給
3人以上の子供が居る家庭を「大家族」と認定され、パリ市内:交通費半額、動物園・美術館・博物館:無料、学校の昼食代:半額、ベビーシッター費用:80%国負担

その他幼児手当て(産前&出産)、教育費・税金等の多種にわたる特典あり。

*  これらの財源:

+主として雇主が負担する保険料、ただし雇主の家族にも適用される。

+総合福祉拠出金:税法適用者の所得1.1%(変動)

紙面の都合で、少子化対策の最大の要因である、フランスの家族給付制度のみに言及したが、その他のソフト&ハード面で日本が見習わねばならぬ多くの制度が存在する。GDPが日本以下のフランスの少子化対策を含めた社会保障額を考える時、フランスにとっては日本以上の負担を強いられているのである。

スウェーデンの少子化対策(紙面の都合上要点のみ)

こどもを生まない理由は、大体次のようなものが考えられ、世界共通のものである。

次は「生まない理由」に対するスウェーデンの少子化対策である。

(1)「こどもが産めないから」:養子縁組の簡素化、各種手当・補助金の養子&実子間の格差解消

(2)「高齢出産はいやだから」:若いときに産める環境つくり

(3)「こどもの教育にお金がかかるから」:教育制度&環境の充実・・幼稚園から大学まで教育費は無料

(4)「こどもを育てるのにお金がかかるから」:保育所の整備、児童手当の充実(5人子持ち:約89万円/年額・税金なし・一般人の平均的給与:280万円・この56%は税金で消える!!)、出産育児休暇制度の充実(450日間)

(5)「育児の精神的~肉体的負担に耐えられない」:労働時間の短縮、男性が育児・家事家庭への参加できる環境づくり、年休の延長と完全消化、親の労働時間選択制度、児童看護休暇制度、

(6)「家が狭いから」:住宅政策の充実。家族数に応じて優先的に住宅提供し住居手当支給。

(7)「自分の仕事に差し支えるから」:労働環境・女性環境の整備(出産・育児所得保障は80~85%)。
とくに日本では女性特に男性が育児休暇を取りやすい環境にする必要あり。

その他スウェーデンの対策:妊娠中の部署移動申告制度、姓の選択・継続制度、同棲法、

離婚自己決定権、出産・中絶自己決定権、男女機会均等オンブズマン制度、

短い労働時間、教育休暇制度、学生ローン制度、労働経験大学入学、

近親者の最期をみとる介護休暇、ホームヘルパー制度の充実、グループホームの普及、バリアフリーの都市計画、

以上スェーデンは、高い児童手当と高率の育児休業保障、そして独自の社会基盤に基づく育児環境の醸成等により、比較的高い出生率を達成した。

結論

*少子化の最大原因である「経済的負担」を解消する手段として、家族手当等の現金~現物支給を積極的に取り入れなければ、少子化の改善は望めない。

*(いわゆる)「エンゼルプラン」「新エンゼルプラン」では、少子化の改善は望めない。

Cf.これらの施策は、育児環境の改善を謳っている。経済的負担軽減が先決である。

(感想)GDPの低い国でのこれら社会保障の財政圧迫は、高い日本よりも大きいことは自明である。この条件下でフランスやスウェーデンは少子化対策を実施し成果をあげている。なぜ日本がこのような施策をとらないか不思議でならない。